帯状疱疹とは
帯状疱疹は、赤みを帯びた水ぶくれの混じった皮疹が顔や体の片側だけに発症し、帯状に並ぶので帯状疱疹と呼ばれ、強い痛みやかゆみ、ヒリヒリとした皮膚の違和感を覚えます。
かつて、子どもの頃に発症することの多い病気に「水ぼうそう」がありました。これは、水痘・帯状疱疹ウイルスと呼ばれるウイルスが体に侵入することで起こる病気です。最近では、1歳過ぎにワクチン接種することが多いと思います。
水ぼうそうに罹患後やワクチン接種後にこのウイルスは神経節で終生潜伏感染しつづけ、普段は免疫力によって活動が抑えられていますが、免疫力が低下するとウイルスが再活性化することがあり、ウイルスが神経に沿って移動し、神経に炎症を起こし痛みが現れ、皮膚に到達すると赤みを帯びた小水疱を形成します。これが帯状疱疹の正体です。
発疹や水ぶくれは1週間から10日ほどで治りかさぶたになることが多いといわれています。ただし、ウイルスの影響で神経が傷ついてしまった場合、発疹が治まっても痛みだけが長期間残り続ける「帯状疱疹後神経痛」になることもあるため、なるべく早期に治療を開始することが大切です。また、帯状疱疹が顔にできた場合は、難聴や顔面神経まひ、角膜炎・網膜炎などの合併症を引き起こすケースがありますので注意が必要です。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスです。水痘(水ぼうそう)と同一の感染力が強いウイルスです。
子どもが水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した場合、2〜3週間程度の潜伏期間を経て、水ぼうそうになります。しかし、水ぼうそうが治った後も、水痘・帯状疱疹ウイルスは脊髄の近くにある神経節に存在し続け、大人になっても消滅することはありません。
水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化する理由としては、免疫力の低下が考えられます。加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が下がったときに活発に働き出し、帯状疱疹を発症しやすくなります。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹の症状は、胸、腹部、背中、顔、頭部などの痛みから始まります。神経痛にも似たピリピリ感やチクチク感が特徴の痛みが、患部の左右どちらかに発生した後、発疹がブツブツとでき、さらに帯状の水ぶくれも現れます。
症状が進行するにつれて痛みがどんどん強くなり、発熱、リンパ節の腫れ、頭痛が現れることもあるため、日常生活を送る上で支障が出るケースも珍しくありません。人によっては眠れないほどの強い痛みを感じることもあります。
症状は3週間程度でおさまるものの、発疹の痕が残りやすいとされ、重症化した場合は発疹が広範囲に広がってしまい、さらに顔面に発症した場合は難聴、視力障害、顔面神経まひなどの原因になることもあるため、適切に治療する必要があります。
帯状疱疹の検査・診断
帯状疱疹の検査では、まず問診で「水ぼうそうの既往歴」を確かめます。また、帯状疱疹は体の左右いずれかに発疹が帯のように発生するという特徴があるため、患部の状態をチェックして診断します。
ただし、単純ヘルペスや接触皮膚炎、水疱性類天疱瘡といった帯状疱疹と似た病気の可能性もあるため、場合によっては皮疹部から検体を採取してウイルス抗原の有無を検査することもあります。
なお、水ぶくれができておらず、皮膚の痛みを感じるのみといった初期状態では診断は困難です。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹は、発疹や水ぶくれが確認されてから72時間以内に抗ウイルス薬による治療を始めるのが理想です。早期治療によって重症化を防ぐだけでなく、発疹がよくなっても痛みが消えない「帯状疱疹後神経痛」になるリスクを低くすることができます。抗ウイルス薬は、なくなるまでしっかりと飲みきるようにしましょう。
複数の神経支配領域に皮疹が及ぶ場合や、全身に皮疹が出現する汎発性の帯状疱疹の場合など症状がひどい場合は、入院の上点滴が必要になることもあります。
症状によっては、痛みを抑えるための鎮痛薬なども使用し、目や耳などの合併症がある場合は眼科や耳鼻科などそれぞれの専門科による治療が必要になります。
帯状疱疹の予防
水ぼうそう経験者なら誰でも帯状疱疹を発症する可能性を持っています。予防策としては規則正しく健康的な生活を送って免疫力アップを目指し、体内に存在する水痘・帯状疱疹ウイルスの活動再開を防ぐことが重要です。
具体的には、
- 十分な睡眠時間を確保する
- 適度な運動の習慣を作る
- 食生活のバランスを整える
- 心身ともにリラックスする時間を設ける
など、日常生活で見直すべきポイントがいくつかあげられます。
50歳以上の場合は、帯状疱疹の予防や発症後の重症化リスクを抑えるために、帯状疱疹ワクチンを接種するのがおすすめです。