乾癬(かんせん)とは
乾癬は皮膚の炎症症状が慢性的に起こる病気です。「かんせん」という言葉の響きから、人から人にうつってしまう病気だと誤解されてしまうことも少なくありません。しかし、乾癬は決して人にうつる病気ではありません。
残念ながら現在では、まだ乾癬の根本的な治療方法は見つかっていません。しかし、患者さんのお体に合わせた治療を行うことで、乾癬の症状が現れないようにすることができます。
乾癬は慢性の疾患であるため、良くなったり悪くなったりを繰り返し、その治療は数十年に及ぶことも少なくありません。同じ治療をしていても、そのときの体調や環境などの違いによって再び悪くなってしまうこともあります。そのため、治療の目標は患者さん一人ひとりで違ってきます。
快適な生活を送るためにも、乾癬を理解し、生活習慣への配慮と適切な治療によって乾癬をコントロールしていきましょう。
乾癬の症状・お悩み
炎症症状によって、皮膚が赤く盛り上がり、かゆみ・痛み・腫れの症状が出ることもあります。アトピーと似たような印象を受けますが、乾癬には乾燥した白い角層が厚く付着し、皮膚がぽろぽろとはがれ落ちてしまう特徴があります。
炎症によってかゆみや痛み・腫れが起こる部位としては、
- 手・肘
- ひざ
- お尻
- 頭(髪の生え際)
など、炎症症状がでる部位は人によって異なりますが、外からの刺激を受けやすい部位(こすれやすい部分など)に出やすい傾向があります。
皮膚のかさつきだけでなく、症状によっては膿をもつ場合もありますが、これらの症状もウイルスや細菌によって起こるものではなく、膿疱性乾癬の場合もあります。
- 仕事柄、人前にでる機会が多いため、とにかく見える部位だけ良くしたい。
- 症状が強く出てしまうのを防ぎたい。
- 人目を気にせず、外出できるようになりたい。
など、乾癬の症状を抱える方は「見た目」を気にされる方が多いです。
まずは、お気軽にご相談ください。
乾癬の原因
乾癬の原因については、まだ明確にはわかっていません。しかし、乾癬はもともと自己免疫反応が起きやすい体質の人に、ストレスや不規則な生活などの環境因子が加わると、免疫システムに異常をきたして自身を攻撃してしまい発症すると考えられています。
また、家族内に乾癬が見られたりすることから、遺伝的な要素が関係しているという考え方もあります。しかし、それだけではなく、様々な要因によって発病や悪化するのではないかという考えが一般的です。
食生活の欧米化が関与しているとも言われ、特に重症型ではメタボリックシンドロ-ムや虚血性心疾患などの全身疾患と関連があると言われています。血圧の薬などの影響で発症する乾癬型の薬疹の場合もありますので、内服薬の確認も必要です。
生活習慣の乱れによる症状悪化
乾癬の症状が悪化する場合には、何らかの原因があります。
生活習慣が影響している可能性も高く、
- 暴飲暴食・偏食
- 喫煙
- 過度の肉体的ストレス
- 過度の精神的ストレス
- 風邪をはじめとするさまざまな感染症
など
乾癬の症状をコントロールするためには、自分自身の日常生活における習慣を見直しながら、症状を悪化させる原因を根気よく見つけたすことも必要です。
乾癬の治療
乾癬の診断
乾癬には大きく分類して以下の5つに分類されます。
- 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
- 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
- 滴状乾癬(てきじょうかんせん)
- 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
- 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
症状の表れ方が異なり、それぞれに適した治療法があります。
まずは症状の程度と患者さんのライフスタイルに合わせて、患者さんそれぞれが継続できる治療方法を選択していくことが重要です。
尋常性乾癬の治療方法
乾癬の種類の中でも、尋常性乾癬の患者さんが最も多く、全体の約9割を占めるといわれています。尋常性乾癬乾癬の治療内容を解説します。
治療は大まかに分けると以下のように分類されます。
外用療法
塗り薬などによる治療(飲み薬や注射薬を除く)です。
- 活性型ビタミンD3外用
- ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)外用
- ステロイド/活性型ビタミンD3製剤配合薬
内服療法
飲み薬による治療法です。
- シクロスポリン(免疫抑制剤)内服
- エトレチナート内服
- アプレミラスト内服
副作用は比較的少なく、広範囲に皮疹がある場合や関節症状がある場合など、外用剤による効果が不十分で、中等症や重症の患者さんに多く使用されます。
光線療法
紫外線療法です。当院では効果の高いエキシマ光線療法を行っています。
以上の治療法を単独で施行する場合と、複数を組み合わせながら治療を進める場合があります。
乾癬はなかなか治りにくい病気であり、治療は長期間になることがほとんどです。治療法を選択する時には、治療法の効果だけではなく、長期的に施行した場合の副作用も考慮した上で進めていきます。
重症例では生物学製剤の使用が必要な場合もあり、その場合は総合病院へご紹介しております。
日常生活で気をつけること
生活習慣の見直し
症状の悪化を防ぐためにも、以下に気をつけながら日常生活を送る必要があります。
皮膚の刺激を最小限に
極力「かかない・こすらない」ことが大切です。
乾癬の特性として皮疹の出ていないところをかくことで、症状が広がってしまうことがあります。
入浴時の注意
皮膚を清潔に保つためには、入浴は大切です。しかし、ごしごしと強く洗わないように心がけてください。
また、湯温が高すぎるとかゆみが増す傾向にあります。温度にもご注意ください。
ストレスをためない
「心と身体の疲れ」は乾癬の大きな悪化要因です。ストレスを感じた際は、なるべくため込まないように注意しながら、うまく発散させる工夫をしていきましょう。定期的な気分転換は、とても大切です。
禁煙する
喫煙は乾癬などの皮膚の疾患だけでなく、さまざまな病気の要因や症状悪化に繋がります。
食生活の見直し
- 脂肪分が高い食事
- 刺激の強い香辛料を使った料理
- アルコールの過剰摂取
は、かゆみを増幅させてしまう可能性があります。
感染症の予防
- 風邪
- 扁桃腺炎
- 虫歯
など、感染症も乾癬の症状悪化を招く要因となります。
日頃の健康管理はとても大切です。こまめな「うがい・手洗い」を心がけ、感染予防に努めましょう。
薬物の使用
いくつかの治療薬を使用したあと、症状が悪化してしまうこともあります。薬を使用する際は、かかりつけ医に相談し、もし症状が悪化した方は、速やかに他の薬に変えてもらう必要があります。
また、同じ治療を長く継続している方は、身体が慣れ、薬が効きにくくなる場合もあります。それらを考慮した上で、治療計画を立てていくことが重要です。